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ツメパッチン

  1. 2008/08/07(木)|
  2. 随想的|
  3. トラ:0|
  4. コメ:0
ウチの会社のスタッフで気付いている人は少ないと思うが、同じビルに入っている証券会社のひとりに「パッチンおじさん」がいる。(もちろん、そう名付けて呼んでいるのはぼくだけだ)

なぜパッチンか。実際その現場周辺に居合わせればすぐ解る。週イチぐらいのペースで、休み時間あるいは昼休みに、ビルのエントランスに現れては、直立したままツメ切りを始めるからだ。ただツメを切るだけならちょっと変わったオッサンで済むことであって、特に気にすることはないのだが、そのオッサンの場合、ツメを切る音がハンパではない。
ツメキリの歯がくたびれているのか、はたまたオッサンのツメが極厚なのか、その理由は定かではないが、いちいち「パッチン!パッチン!パッチン!」と大きな音が周囲にこだまする。
どこかで聞いたことのある音だと思ったら、これはニッパーでプラモデルのランナーを切る音だ。普通にランナーからパーツを切り離す音ではなく、戦車プラモのアンテナ等、改造用のパーツを自作する際ランナーの幹部分を切り取るあの音そっくり。切れ目を入れた厚手のプラ板を割る時も同様の音が出る。プラモデルに縁のない女性読者のためにもっと解りやすく表現するなら、2本の50cmプラスチック定規をそれぞれ両手に持ち、平面部分を強く叩き合わせた時の音と言えば……ますます解りにくくなったけれども、要するに、硬質で乾いた、瞬間的なパンチ音が弾ける。

つってもたかがツメ切る音だろう大袈裟な、と思われるだろうが、以前、ビル前の歩道でおもむろに始めた時、周囲数メートル圏内の人々が何だ何だとキョロキョロしていたことからその音の凄さがうかがえるだろう。オフィスビルの谷間で、そんな音が継続的に鳴り響いたら、火薬式の何かが弾けたと思い込んでつい身構えてしまう人もいて当たり前だろう。

ぼくの田舎では、田畑を荒らしに来るシカやイノシシを追い払うため、継続的に「パーン」と音が鳴る装置を農家の人が仕掛けたりするが、バッテリーを野晒しにするのは環境的によくないだろうから、ぜひこの「パッチンおじさん」の導入を奨めてみたい。

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